日本の夏、怪談の夏その2『幽剣抄』
ブログを始めて1週間ほど経ちますが、未だにちょうどいい文体が掴めずにいます。
少し話し言葉に寄せた方が書きやすいし読みやすいような気がするのですが、他の方から見てどうなのでしょう。
さて、先日からの怪談ブームが去らず、近頃はひたすら怪談本を読み漁っております。
今日読んだのは菊池秀行の『幽剣抄』。
菊池秀行といえば「魔界都市〈新宿〉」シリーズや「吸血鬼ハンターD」などが有名ですね。私も中学生の頃、父に借りてよく読んでいました。でも大人になってから考えると、普通なら娘に貸す本ではないよねって感じがします。まあ、面白かったのでいいですけど。
先に断わっておきますと、『幽剣抄』には菊池作品に特有の超絶美形な超人主人公は登場しません。あくまで江戸時代の下級武士たちと、それを取り巻く人々にまつわる怪異を描いた小説です。
ドクターメフィストやDのような派手な美形はいませんが、地道に剣の道に生きる男たちの渋いかっこよさがあります。たぶん中学生の頃に読んでいたら、このかっこよさに気づけなかったのではないかと思います。
この本は短編5話と掌編4話が交互に配置されているのですが、個人的には掌編の方が怖かったように思います。短編も面白かったのですが、仇討ちなど幽霊が出てくる活劇といった雰囲気で、掌編の方が純粋に怖い話らしく感じました。
中でも1番怖かったのは「茂助に関わる談合」。深夜、館林甚左衛門の元を甥の喜三郎が訪れます。先だって世話してやった茂助という若党のことで来たそうですが、どこか様子がおかしい……。と、大体こんな話なのですが、何かがおかしい、変だという違和感に引き込まれて読んでいる内に、あの身の毛がよだつ結末がやってくるのです。
読んでいる間は不気味さが先立ちますが、読み終えた瞬間に怖さがぞ〜っと襲い掛かってくる一篇です。
他の掌編も恐怖や不条理に満ちた粒ぞろいで、いっそ掌編だけ集めた本を読みたいくらいでした。