薄荷脳の夢

1日1冊読みたい、とある勤め人の読書記録と日々のよしなしごと。ミステリとホラー多めだけどかなり雑食。

とにかくカッコイイ『COCOON 修羅の目覚め』

 久しぶりに本をジャケ買いをしてしまいました。

 買ってしまったのは『COCOON 修羅の目覚め』(夏原エヰジ)。イラストレーターのマツオヒロミさんが表紙を描いていて、黒と赤を基調とした装丁ですごくカッコイイのです。

 ここしばらく、表紙で選んで買うと失敗しがちだったのですが、これは文句なしに中身もカッコよかったです。

 

 

 

 舞台は江戸時代、天明期の吉原。主人公の瑠璃は唯一無二の美貌を誇り、吉原の大見世「黒羽屋」で1番上の位である花魁を務めています。

 しかし、それは表の顔。夜になると江戸を脅かす「鬼」を退治する闇組織「黒雲」の頭領として、刀を手に異形の者と戦います。

 瑠璃は並外れた身体能力を持ち、治癒能力も常人のそれとは段違いなのですが、それは彼女の出生に秘密が……。

 

 鬼が瑠璃の持つ妖刀でしか倒せないところとか、鬼に対処する闇組織とか、読んでいて「BLOOD」シリーズを思い出しました。

 やっぱり日本刀で戦う美女(美少女)っていいですよね。その手の作品は数多くありますが、花魁が戦うものはなかなかありませんし、何より唯一鬼を倒せる圧倒的な強さに惹かれます。

 裏稼業はもちろん、瑠璃は黒羽屋での花魁としての仕事もきちんとこなします。道中で見事な外八文字を披露しますし、客への文も代筆ではなくちゃんと自分で書きます。

 それも普通なら子供の頃から何年もかかるものを、十五になって黒羽屋に売られてから瞬く間に習得したそうです。

 なので努力型の主人公が好きな人には、あまり好まれないヒロインかもしれません。逆に、天才とか超人系の主人公がバンバン活躍するような話が好きな人にはオススメです。

 他のキャラクターたちも、妖怪だったり瑠璃のことが気に食わない同僚だったりと個性的で、吉原という舞台設定もしっかりしていて、世界に入り込める感じが良かったです。

 ちょっとだけ気になったのは、吉原の廓の事情や人間関係、鬼についてなど、説明的な部分にページを取られていて、ストーリーが少し薄まってしまったように思います。

 5巻まで刊行予定の1冊目というこで仕方ない部分もあるので、この辺りは次巻以降に期待したいと思います。

 それでもアクションシーンはしっかりしていて読み応えがありますし、エンターテインメント小説らしい読む楽しさのある本でした。