薄荷脳の夢

1日1冊読みたい、とある勤め人の読書記録と日々のよしなしごと。ミステリとホラー多めだけどかなり雑食。

くねくねを見た話

 先日は怪談本を紹介しましたが、今日は私が唯一見かけた、不思議なものの話をしたいと思います。そんなに怖くはないと思いますが、その手の話が苦手な人はご注意ください。

 あれは20年近く前、小学校低学年だった頃のことです。通っていた小学校が小高い山の上にあったので、毎朝急な坂道を登って通学していました。

 坂の片側は崖といいますか、けっこう急な山の斜面になっていて、その斜面の上あたりに学校の隣の公園がありました。

 ある日、いつものように友人と坂を登っている時、ふと上を見上げてみると、何か黒いものが崖の上に立っていました。

 それは人の形をしていましたが、顔があるとか服を着ているとか人間らしいディテールが一切なくただ真っ黒で、影が立ち上がってそこにいるようでした。立っている場所も公園にある柵の外側の、斜面ギリギリのところで普通人が立ち入らない所でした。

 で、そいつはなぜか腕を大きく振り回していました。振り回す、というよりも少し複雑な動きで、何かどこかで見たような……

 あ、パラパラだ。ちょっと規則的というか、リズミカルに腕を大きく動かす様が、その当時まだ流行っていたパラパラに似ていたのです。

 そして心の内にだけ留めておけばいいのに、クラスメイトや家族に「パラパラを踊っている幽霊を見た!」と言ってしまったので、「幽霊がパラパラを踊るワケないじゃん」とバカにされる羽目になりました。

 話す人話す人みんなに否定されている内に、だんだんと見間違いだったんじゃないかと思うようになり、最近までそんなものを見たことは忘れていました。

 なぜ今になって思い出したかというと、ネットで「くねくね」という都市伝説の存在を知ったからです。

 くねくねというのは、田園地帯に出没しくねくねと動く謎の存在で、その正体を知ると精神に異常をきたすとされています。

 私が最初に知った話だとくねくねの色は白だったのですが、調べていると黒いくねくねもいる、という情報に行き当たり、そういえば小学生の頃見たアレってそうじゃない? と思い出した次第です。パラパラじゃなくてくねくねだったワケですね。

 ただ、見たのが出没地帯とされている田んぼではなく山の上ですし、色も多数派の白ではなく黒なのでやっぱり何かの見間違いかな、という気持ちが強いです。朝の人気のない公園でパラパラを練習していた人とか。(それはそれで謎……)

 そもそも見たら精神に異常をきたすそうですし。いや、正体までは分からなかったからセーフなのかな?

 ちなみに、当時一緒に登校していた友人にこのことを訊いてみたら「るかが坂の途中で何か見たって言ってたのは覚えてるけど、それ以外は覚えてない」とのことでした。……とりあえず、私が何か見たことだけは確かなようです。