薄荷脳の夢

1日1冊読みたい、とある勤め人の読書記録と日々のよしなしごと。ミステリとホラー多めだけどかなり雑食。

アキレスと私

 皆さん、アキレス腱って切ったことありますか?

 私は切ったことがないのですが、相当痛いらしいですね。私が幼稚園の頃、切ってしまった同じ組の子が言ってました。

 それで当時、アキレス腱がよく分かってなかった私は、父に「アキレス腱って何?」と訊ねました。

 父はここ、と踵側の足首を指差し「無理な運動をしたりして、ここが切れると歩けなくなる。なんでアキレス腱っていうかというと、昔、アキレスという勇者がいて、ドラゴンを倒してその血を浴びて不死身になったんだけど、血を浴びた時に足首のところに葉っぱがくっついてて、そこだけ不死身にならなかった。その後、アキレスは足首を刺されて死んでしまったからココのことをアキレス腱っていうんだ」と私に教えました。

 もう大半の読者さんはお気付きかと思いますが、アキレスはドラゴンを退治してませんし、血を浴びて不死身になったワケでもありません。

 アキレスが不死身になったのは、女神である母、テティスが赤ん坊のアキレスを冥界の泉に浸したからです。この時、足首を掴んでいたので、足首だけ不死身にならなかったのです。

 高校生になった私は、図書室で借りたギリシャ神話の本で真実を知り、恥ずかしくて消え入りたくなりました。だって小学生の時、ドラゴンの血で不死身になった話を、さんざんクラスメイトに言いふらしたんですもの。もうあの頃のドヤ顔の自分を殴りたい。

 それから、ドラゴンの話はどこから来たんだろう、と長年の謎だったのですが、(父を問い詰めても「えー、そんなこと言ったっけ?」と要領を得なかった)2年ほど前、Fate/Grand OrderというRPGを始めて、ようやく疑問が氷解しました。

 ジークフリート、お前だったのか……!

 FGOを知らない人向けに簡単に説明しますと、歴史上の様々な英雄を召喚して世界を救うゲームなのですが、ストーリーの序盤にジークフリートという『ニーベルンゲンの歌』に登場する英雄が出てくるのです。

 何を隠そう、彼こそが邪竜ファヴニールを倒し、その血を浴びて不死身となった英雄なのだ!

 その後、Fate/Apocryphaというアキレウスジークフリートが登場するアニメが放映され、ゲーム内にもアキレウスが実装されたりして、Fateシリーズを知ってる人はそういう勘違いしそうだな、と思いましたが、私があの話を聞いた時にはこのシリーズは影も形もなかったんですよね。

 まさか2019年にfateを見て勘違いした人が、タイムスリップして幼稚園児だった私に父親のフリをしてアキレス腱のことを教えた……なんてことはあり得ないので、なぜ20年前あんな勘違いが起こったのかは、未だにちょっと謎なのです。